脳は、本来治り得る臓器である

人間が脳を損傷した場合であっても、医療・福祉サービスを利用して失った脳機能を取り戻すことができます。 これは、脳組織を修復するための分子・細胞メカニズムが開始され、神経回路をつなぎかえて脳機能を修復し、 社会生活に適応するまでの自然な回復プログラムが脳に本来備わっているためです。

しかしながら、「脳のどこが、いつ、どうやって、脳機能を回復させるのか」という修復プロセスの実態は ほとんど謎のままであり、脳卒中や脊髄損傷後の機能回復を目的として開発されたほとんどの医薬品・ 医療デバイスが社会実装に失敗し続けているのが現状です。

その最大の原因は、人間の置かれた生活・社会環境の多様性に起因するヒト脳機能回復プロセスの個人差を 鋭敏に測る客観的評価指標がまだ存在しないことにあります。

人間の脳機能回復の最も根源的なメカニズムに迫るためには、
分子から社会にいたるまでの多階層の脳機能回復情報を
学際的かつ統合的に理解する必要がある。 — リカバロミクス 領域申請書 より
🧬 分子・細胞レベルの解明は進んでいる

一細胞・空間トランスクリプトミクス技術の革新によって、神経回路修復に関わる中心的な 分子群をデータ駆動型アプローチで推定・検証できる時代が到来しています。

🔗 しかし「統合的理解」が存在しない

分子〜社会レベルにわたる多階層データを統合解析した前例は世界的に見ても存在せず、 脳機能回復の客観的指標も確立されていません。

🏥 結果として社会実装が繰り返し失敗

開発された医薬品・医療デバイスのほとんどが社会実装に失敗。 回復プロセスの多様性を捉えられないまま、均一な介入が試みられてきました。

🌏 本領域リカバロミクスが解決する

分子〜社会の一気通貫型統合解析によって、個々の回復プロセスを客観的に評価し、 次世代の医療福祉サービスと生活環境設計に直結させます。

世界で随一の超高齢社会・日本から、
脳機能回復科学の新潮流を

世界的に加速する高齢化社会において、高齢者の社会的支援や介護福祉が必要となる主因は 脳卒中の後遺症・認知症などの脳機能障害です。本邦は世界で随一の超高齢社会であり、 個体・社会レベルの脳機能回復を解明する最適な研究対象が形成されています。 リカバロミクスは、この社会的文脈の中に生まれた、日本発・世界初の学際研究領域です。

29%+
高齢化率(2024年)
世界で随一の超高齢社会。脳機能障害をもつ高齢者の増加が社会課題の最前線。
数百
規模の縦断コホート(世界初)
脳卒中患者の脳神経活動と運動機能の経時変化を網羅計測する、前例のない試み。
5
統合解析レベル
分子・細胞・脳神経活動・個体・社会の5階層データを一気通貫に統合。
01
なぜ回復メカニズムは未解明なのか

人間の身体・精神の状態は多様であり、脳機能回復の過程も生活・社会環境から大きな影響を受けます。 遺伝的背景が統制された動物モデルとは異なり、「人間における典型的な回復パターン」を定義すること 自体が世界的に困難な課題でした。

02
社会実装がなぜ繰り返し失敗するのか

脳機能回復を目的に開発された医薬品・医療デバイスの大多数が社会実装に失敗してきました。 各個人の回復度を鋭敏に測る客観的指標が存在しなかったため、適切な介入タイミングや 効果の判定が不可能でした。

03
生活・社会環境の影響はどこまで解明されたか

自宅や施設環境における社会レベルの脳機能回復メカニズムは、これまでにほとんど解析された 例がありません。退院後の生活機能・家庭・就労状態を含めた包括的な分析が、 真の回復支援には不可欠です。

04
学際統合なしに根本原理は解明できない

脳機能回復を分子・細胞・脳神経活動・個体・社会レベルで同時に解析する学際的研究体制は、 世界的に見ても存在しませんでした。各領域の専門家が縦割りで研究を進める限り、 人間の根源的な回復メカニズムには到達できません。

Recovery × Omics ——
脳機能回復情報学という新分野の創生

リカバロミクス(Recoveromics)は、「recovery(機能回復)」と「omics(網羅解析)」を掛け合わせた 造語です。脳機能回復に関わる膨大な生体情報を多階層・横断的に解析・統合し、 人間の最も根本的な回復メカニズムを解明する、世界に類を見ない新しい学術体系です。

Recovery
機能回復
+
Omics
網羅解析
=
Recoveromics
脳機能回復情報学
5-Layer Integration — 5階層の統合解析
5 社会レベル Social / Environmental モーションキャプチャー / リビングラボ
↑ 統合 ↓
4 個体レベル Individual / Behavioral 生活機能計測 / アンケート
↑ 統合 ↓
3 脳神経活動レベル Neural Circuit BMI / EEG / MRI
↑ 統合 ↓
2 細胞レベル Cellular 単細胞解析 / 空間トランスクリプトミクス
↑ 統合 ↓
1 分子レベル Molecular 遺伝子発現解析 / タンパク質同定
🔬
一気通貫型の統合研究

分子生物学から建築学・社会学まで、分断なく「一気通貫」で解析する研究体制を構築。 各階層の専門家が有機的に連携し、データが分断されることなく統合されます。

End-to-End Integration
🤖
最先端技術の融合

AIモーションキャプチャー・BMI・空間トランスクリプトミクス・グラフ理論・深層学習を駆使し、 従来の計測・解析の限界を超えます。DeepCOLOR法・離散幾何学など独自手法も開発中。

Cutting-Edge Methods
🏙️
科学から社会設計へ

解明されたメカニズムを医療に留めず、住居・施設環境のデザイン・都市設計・福祉政策まで 浸透させる学理を構築します。「脳科学の成果を人間の生活に還元する」ことが本領域の使命。

Science to Society

世界で類を見ない、4つの独創性

欧米・中国の脳科学国家プロジェクトにおいても「脳機能回復」は注目テーマのひとつですが、 分子から社会にいたる多階層の統合研究は世界的にも実施されていません。 リカバロミクスには、これまでの学術領域と根本的に異なる以下の独創性があります。

世界初
数百人規模の経時的・身体網羅的計測

AIモーションキャプチャーとBMIを用いた、 数百名規模の脳卒中患者の脳神経活動と運動機能の経時変化を網羅計測 する試みは学術的に世界初です。 リアルワールドの回復データを大規模に蓄積する基盤を本領域が初めて構築します。

独創的
分子〜社会の「一気通貫型」統合解析

分子生物学・神経科学・医学・工学・数学・建築学・社会学の専門家が一堂に会して行う 多階層・多施設・多分野のデータ統合解析は、 過去に発足したいかなる学術領域にも例を見ない体制です。

革新的
脳機能回復の「客観的評価指標」の創出

個人差に対応した回復度の客観的評価指標を世界で初めて策定します。 この評価指標こそが、社会実装の失敗を繰り返してきた最大の壁 を突き破る鍵であり、本領域が脳神経科学にもたらす最大の変革点です。

先端的
日本の超高齢社会を「研究フィールド」に

世界で最も高齢化の進んだ日本は、個体・社会レベルの脳機能回復研究にとって 世界最良の研究フィールドです。 介護ロボット・福祉工学においても世界最先端の技術を有する本邦から、 脳機能回復科学の新潮流を発信します。

🌐
World First Achievement
人間の経時的な脳機能回復過程を生活・社会レベルで網羅計測する世界初の取り組みが、すでに開始されています。

牛場、服部、小川、加藤らによる富山大学・富山西リハビリテーション病院・国立長寿医療研究センターを 中心とした多施設共同研究として、数百例規模の縦断コホート研究が既に進行中です。 本領域の採択によって、この取り組みを分子から社会まで統合した史上初の リカバロミクス研究基盤へと発展させます。

世界随一の超高齢社会から、
脳機能回復科学の新潮流を発信する

「人間の脳機能回復の多彩さを規定する根本原理の解明」という世界未踏の課題に、 学際的・統合的なアプローチで挑みます。5年間の研究を通じて、 脳機能回復に関する科学的基盤を確立し、その成果を生活・社会に実装する道筋を世界に示します。

01
根本原理の追究

脳機能回復の典型的なパターンを動物モデルとヒトの両方から見出し、 その原理を分子〜社会レベルの各階層で解明します。 マウス脳卒中モデルとヒトリアルワールドデータを対応させた比較研究が核心です。

02
科学的評価体系の確立

脳機能回復に影響を与える環境要因を同定し、個人差に対応した客観的評価指標を創出します。 この評価指標は、医療・福祉・都市設計が共通言語として利用できる科学的基盤となります。

03
世界への新潮流発信

リアルワールドの回復情報を統合解析した成果を日本から世界に発信し、 欧米・アジアの脳研究拠点との国際ネットワークを構築。 今後の高齢化社会に直面する各国のロールモデルとなることを目指します。

5-Year Targets — 5年間で目指す成果
📊
脳機能回復の評価指針の創出 —— 心身・生活・社会・福祉の状況を包含した、世界初の客観的評価体系を策定
🗄️
リカバロミクス・データ基盤の構築 —— 分子〜社会レベルを統合した「RehaNode」データプラットフォームを確立
🏘️
生活空間・都市環境のデザイン原則の提唱 —— 脳機能回復を持続させる住居・施設・都市設計の科学的指針を社会に提示
🏛️
世界初の脳機能回復研究拠点の形成 —— 東京科学大・早稲田大・大阪大・慶應義塾大を中核とした国際研究ハブを構築
Our Ambition — 目指す未来

「脳は治る臓器である」という
革新的概念を、世界に発信する

リカバロミクスが目指すのは、学術論文の発表に留まりません。 本領域で解明される脳機能回復のメカニズムと評価指標は、医薬品・医療デバイスの社会実装を 世界で初めて本格的に軌道に乗せ、住居・施設・都市の設計原則として社会に浸透し、 「脳後遺症ゼロ」を目指す次世代社会の学理的基盤となります。 日本発の脳機能回復情報学が、世界の高齢化社会が迎える共通の課題に答えを示します。

Future
見据える未来
科学が描く、脳回復の地平

分子から社会まで統合された知見が、個別化医療・次世代リハビリを現実のものにします。 BMI・神経再生医薬・AI評価システムが科学的根拠のある基盤で社会実装され、 「脳の後遺症ゼロ」という地平が初めて視野に入ります。

Hope
灯す希望
回復できる、という確かな光

脳卒中・脊髄損傷を経験した人々が、自宅・地域・社会の中で持続的に回復できる環境を。 住居・施設・都市のデザインに脳科学の知見を組み込み、退院後の生活を科学が支えます。

Passion
研究者の情熱
解明への飽くなき挑戦

医学・数学・建築学・社会学——異なる知と情熱を持つ研究者たちが、 「脳機能回復の根本原理」という世界未踏の問いに挑みます。 日本発の情熱が、世界の脳科学に新しい潮流を起こします。